語りびとたちの記録
あれが一番、辛かったねぇ
2010年7月の語り合いの記録
たえさん(93)・さぶろうさん(80代)・まちこさん(70代)・ひさえさん(80代)の語り合い
(8人グループのうち4人の対話を抽出)
※登場人物はすべて仮名です
- たえさん(93歳)
- あのときやさぁ、どこ逃げても、ピューンピューンって弾ぬ音、聞こえてたわけよ。
空からも陸からもさ。艦砲もすごかったさぁね。
うちなー家族7人、小さな妹も一緒に、山の中ぐゎー逃げ回ってたわけ。
水も無い、食べ物も無い、どこ行っても恐ろしかった。
夜になったら真っ暗さ。月出てると、アメリカーに見つかるから木ぬ下(シタ)に隠れてたわけ。
子どもが泣くと危ないから「シーッ」て、口ぬ押さえてな…。
あれが一番、辛かったねぇ。
(その場がしばらく静まり、風の音が聞こえるような空気) - さぶろうさん(80代)
- 月ぬ光や、あのときばかりは怖かったね。
普段はありがたいのに、あの頃は光も命取りさ。 - まちこさん(70代)
- 私も妹ぬ口、押さえた覚えがあるよ。
泣きたいのはこっちも同じなのに、必死だったさぁ…。 - たえさん
- ガマに入ったけど、人いーぱいで、臭いもひどくてよ。
でも外出たら撃たれるかもしれんさね。息ひそめて朝が来るのを待ってたわけよ。 - ひさえさん(80代)
- そんな中で…生き延びられたのは…本当に、何と言うかね…。
- たえさん
- 生きて帰れるとは思ってなかったよ。
何で自分は生き残ってしまったかねぇと、ずっとずっと責めていた。
でも、今こうして語れるのは、あのとき死んでった人たちぬおかげだと、私は思ってる。
だから、自分が見たことや、感じたこと、語らんといけんと思ってるわけさ。
(数人が小さくうなずく) - さぶろうさん
- 「責めていた」って…じゅんにや(本当にね)
話さないで来たこと、いっぱいあるさ。でも今日は少し出てきた気がする。 - まちこさん
- こうやって語るとね、ちむぐりさが少し、ちむぐくるに変わっていく感じするさ…。
語りを通して、痛み(ちむぐりさ)そのものが消えるわけではない。
でも、その痛みを人と分かち合い、受けとめてもらう経験が、心の中にあたたかい変化を生むような感じがするさ。