語りびとたちの記録
自分だけじゃなかったんだな
2015年6月の語り合いの記録
シゲさん(85)・トミさん(90)・カジさん(89)の語り合い
(7人グループのうち3人の対話を抽出)
※登場人物はすべて仮名です
- シゲさん(85歳)
- あの頃、自分は15歳だったさ。まだ子どもだったけど、学徒動員で前線に出されたんだよ。
戦場ってのは、もう想像以上でね。
撃たれた兵隊の姿も、壕の中で亡くなった人の顔も……今でも夢に出てくるわけ。
夜中にうなされて起きることもある。戦後70年以上経っても、ずっとだよ。
でもさ、このことを誰かに話したのは、ここが初めてさ。
(深く息を吐き、しばし沈黙)
ここに来て初めて思ったんだ。
「自分だけじゃなかったんだな」って。 - トミさん(90歳)
- うん……わかるさぁ。私も、長いこと話せなかったよ。
話しちゃいけないって思ってた。家族にもね、言えんかったさ。
戦争の話をすると、嫌な顔されたり、話題変えられたりして…。
でもここに来て、「話してもいいんだ」って初めて思えたわけさ。
ここにたどり着くまでに、60年かかったけどね。 - カジさん(89歳)
- 俺もまったく同じ。
いくさが終わったあと、「もう話すな」って空気が強かったからな。
泣いたらいけん、黙っとけ、って時代だったよ。
でもこうして話してみるとさ、
あのとき言葉にできなかった気持ちが、少しずつ出てくるんだよ。
最初は戸惑ったけど、今ではここが、ちむぐりさを出していい場所になってるさ。 - シゲさん
- 語ったからって、夢を見なくなるわけじゃない。
でもね……胸の重さが、ちょっとだけ軽くなるんだよな。 - トミさん
- だからね、ここは、そういう場所さね。