語りびとたちの記録
大切な家族がいなくなるということ
2019年10月の語り合いの記録
けいこさん(90)・じゅんさん(84)・まさこさん(97)の語り合い
(6人グループのうち3人の対話を抽出)
※登場人物はすべて仮名です
- けいこさん(90歳)
- 私の兄はね、特攻で亡くなったんです。
あの時、私は北部に疎開していて、収容所に入っていたんだけど…
ある日、知らされたの。「お兄さん、もう帰ってこない」って。
あの時の感覚はね、今でも忘れられんさ。
言葉が出なかった。
家族はみんな泣いてたけど、私は泣けなかったんだよ。
ちむぐりさが胸に詰まって、動けんかった。 - じゅんさん(84歳)
- けいこさん、わかるさ……ワンも7歳の時だったさ。
マラリアで、父ちゃんも母ちゃんも、あっという間に死んでしまって…。
収容所の中だったさ。誰も助けてくれなかった。
「お父さん死んだよ」「お母さんもね」って言われた時、
それが何の意味か、はじめは分からなかったよ。
でも、急に静かになったさぁね、まわりが。
泣くことも、怒ることもできなかった。
ただ、胸がキュッとなって、冷たくなった感じがした。 - まさこさん(97歳)
- …私はね、うちの子を亡くしたの。
まだ2歳にもなってなかったよ。
お腹空かせて、泣いて、泣いて、泣かせたらいけないって思って、
ぎゅっと抱きしめて…でも、何もできなかった。
その夜、子どもは冷たくなってて……
あの時の腕の重さ、今でも忘れられんさ。
今でも、ときどき夢に出てくるよ。
「おかあさん」って、あの声だけが聞こえる。 - けいこさん
- 家族がいなくなるって、
身体の一部がちぎれていくみたいなものさね。
あの時、戦争で人が死ぬのは「しかたないこと」だって、大人たちは言ってたけど、
私たちは、ちむぐりさのまま、何十年も過ごしてきた。 - じゅんさん
- ほんとね…。
誰にも言えなかったさ。
大人になっても、ずっと「話すな」「忘れろ」って言われてたさ。
でも、忘れられるもんじゃないよな。 - まさこさん
- 私も、語れるようになるまで、ずいぶんかかったよ。
語ったからって、あの子が戻るわけじゃないけど……
語らんと、胸の奥が固まったままになってた気がする。 - けいこさん
- ここで、こうして話せることがね、
ちょっとずつ、ちむぐりさぁ、だね。
泣くのも、怒るのも、語るのも、どれも大切だったんだね。