語りびとたちの記録
「ナチカサヌ、ないびらんどー」(泣いていいんだよ)
2009年4月の語り合いの記録
セイさん(88)・ハナさん(84)の語り合い
(6人グループのうち3人の対話を抽出)
※登場人物はすべて仮名です
セイさん(88)は、語り合いの場に来るまで、何年もためらっていた。
「ナチカサヌ(泣くぬぬ)が恥ずかしくてぃ」と話した。
「戦争ぬ話しようとすると、すぐ涙ぬ出ちゅん。年寄りがみっともないさ、んち自分でぃ思てぃ……だからぬ人んかいは話しらんたん」
ハナさん(84)が穏やかな声で言った。
「わんも同じやいびーん。ナチャーいかんと思てぃ、ずっとぅ封印ちてぃちゃん。でぃんが、くまんかい来てぃ、みんなナチョーるぬ見てぃ、ナチャーいいんだってぃ、やっと分かたん」
「泣いていいんですか」とセイさんが繰り返した。
「ナチャーいいんどーよ」とハナさんは答えた。
その言葉で、セイさんの目から涙がこぼれた。
止まらなかった。
ハナさんがそっと手を差し伸べた。
セイさんはひとしきり泣いてから、「こんなに泣いたのは、戦争が終わって初めてかもしれないさぁ」と言った。
「わんもそうだったさぁ」(私もそうだった)とハナさんは微笑んだ。