語りびとたちの記録
アメリカ~のチョコレート
2009年10月の語り合いの記録
カメさん(86)・ウタさん(81)の語り合い
(6人グループのうち3人の対話を抽出)
※登場人物はすべて仮名です
カメさん(86)は、壕から出た後に目にした光景を語った。
「アメリカの兵隊が、こっちに向かって歩いてきた。私は死ぬと思った。でも……その兵隊がポケットからチョコレートを出して、差し出してきたんです。怖くて受け取れなかった。兵隊は笑ってそのまま置いていった」
「それからずっと考えてきた。あの人にも家族がいたんだろうな、と。遠い国から来て、こんな島で戦争して、それでも子どもにチョコレートを……あの人は今も生きているんだろうか」
ウタさん(81)が言った。
「私も同じようなことを考えたことがある。沖縄の人も、ヤマトの兵隊も、アメリカの兵隊も、みんな誰かの子どもだった」
「そうだよね」とカメさんはうなずいた。
「だから戦争はいかんと思う。あのアメリカ―のチョコレートを見るたびにさ」
「そういう話ができる場所が、やっとできた」とウタさんは言った。
「生きているうちに、話せてよかった」